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80代からの性の健康

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80代以降は、体の状態も暮らし方も、人によって大きく違う年代です。自宅でパートナーと暮らす人、ひとり暮らしの人、介護を受けている人、施設で暮らす人がいます。どの場合でも、人とふれあいたい、大切にされたいという気持ちは、その人の、人としての誇り(尊厳)の一部です。ここでは性を、「行為」だけでなく、ぬくもりやふれあいを含む広いものとして考えます。

この年代のからだの変化

英国には、50歳以上の同じ人たちを長く追いかける調査(縦断調査・ELSA)があります。その約6,200人のデータでは、性の活動は年齢とともに減るものの、80代・90代でも一定の割合の人が続けていました。性の働きの問題は、珍しくありません。一方で、それを「悩み」と感じる人はずっと少なく、女性では年齢が上がるほど悩みが減る傾向もありました(Lee ら, 2016)。英国で本人が答えたデータ(自己申告)で、ある時点の分析です。それでも、「変化がある=不幸」ではないことがうかがえます。

ひとりの時間(オナニー)

ひとりの時間は、この年代でも自然な営みです。大切なのは、安心してひとりになれる場所と時間があることです。施設や家族と暮らす場合は、人に見られずに過ごせるしくみ(プライバシーを守るしくみ)があるかを確かめましょう。たとえば、部屋に入る前のノックや声かけ、カーテンや鍵などです。介護する側は、見かけても責めたり笑ったりせず、そっとその場を離れましょう。人目のない場所で過ごせるよう気を配ることが、その人の尊厳を守ることにつながります。

ふたりの時間

オランダの65歳以上、約2,400人の調査があります。パートナーのいる人では、前向きな気持ちや生活への満足度が高い人ほど、性の活動やキス・なでるといったふれあいが多い傾向がありました。それは、どの年齢層でも同じでした(Freak-Poli ら, 2017)。ある時点の調査なので、ふれあいが幸せを生むのか、幸せな人がふれあうのかは区別できません。また、もの忘れなどが進む病気(認知症)の人は含まれていません。それでも、この年代のふれあいが、心の状態と結びついていることがわかります。

パートナーを亡くしたあとに、新しく心を寄せる人ができることもあります。男女でも同性同士でも、それは本人の自由です。家族は驚くことがあっても、まず本人の気持ちを聞くことから始めましょう。新しい関係では、性の行為でうつる病気(性感染症)の予防も、年齢に関係なく必要です。

認知症や介護の場面で大切にしたいこと

施設で暮らす認知症の人の、親密さと性について、研究をまとめたものがあります。そこでは、職員の考え方や、同意する力、施設の文化などが調べられてきました。一方で、本人の視点がほとんど抜けていて、「守る」ことにかたよりがちだと指摘されています(Roelofs ら, 2015)。対象は12件の研究だけで、方法も質もまちまちです。

考えたり覚えたりする力(認知機能)に障害のある人の、性の同意をどう判断するかを調べたまとめもあります。そこでは、同意する力を「ある・ない」で一律に決めないことが大切だとされています。本人の力、状況、権利をあわせてみること、できるかぎり本人にもその判断の流れに加わってもらうことが大切です(Esmail ら, 2022)。含まれた研究は8件と少なく、国や法律によって考え方が異なる点には注意が必要です。日本でも、介護の現場で、利用者の性的な行動をただ「問題行動」としておさえないことが提案されています。その奥にある気持ちを理解して対応し、本人の生活の質を軸に、家族や周りの人と調整する姿勢です(荒木, 2020)。

同意は、夫婦であっても毎回必要です。本人が嫌がるそぶりを見せる、状況を理解できていないように見える、相手が誰かわからなくなっている、といった場合は、ふれあいを止めてください。判断に迷うときは、ひとりや家族だけで抱えないでください。主治医、介護の計画を立てる専門職(ケアマネジャー)、施設の職員と、チームで相談しましょう。職員や他の利用者への望まないふれあいがある場合も、叱るだけで終わらせないことが大切です。背景にある寂しさや不安、体の不調を探りましょう。

病気や薬との付き合い方

この年代は、心臓の病気、脳卒中のあとに残る症状(後遺症)、骨がもろくなる病気(骨粗しょう症)、関節の痛み、手のふるえや動きにくさが出る病気(パーキンソン病)などを持つ人が多く、薬の種類も増えがちです。眠るための薬や気分を整える薬、血圧の薬などが、性への関心や体の反応、ふらつきに影響することがあります。自分の判断で薬をやめず、かかりつけの医師や薬剤師にまとめて相談しましょう。

勃起の悩み(ED)の治療薬は、医師の処方が必要です。胸がしめつけられるような心臓の病気(狭心症)などに使う硝酸薬とは一緒に使えず、心臓の状態や飲んでいる薬によっては使えません。腟の乾燥や痛みには、市販の保湿剤や、すべりをよくするゼリー(潤滑ゼリー)があります。ほかに、腟に使うエストロゲンの薬(腟のエストロゲン製剤。エストリオール腟錠など)という選び方もありますが、医師の処方が必要で、持病によっては使えないことがあります(日本産婦人科医会)。

相談先は、かかりつけ医、家に来てくれる医師(訪問診療の医師)、泌尿器科、婦人科です。認知症や介護にかかわる悩みは、ケアマネジャーや、高齢者の暮らしの相談窓口(地域包括支援センター)にも相談できます。

この年代へのひとこと

80代以降の性は、手のぬくもり、名前を呼ぶ声、そばにいる安心感まで含んだ、広いものです。人とふれあいたいという気持ちは、年齢にかかわらず大切にされてよいものです。

この年代のお題今日、大切な人(あるいは自分自身)の手を、ゆっくり包んでみましょう。どんな気持ちになったか、ひとこと言葉にしてみてください。

参考にした資料

📜 オナニー道の心得📓 記録アプリ「修行帳」