陰毛は「ある・ない」どっちがいい? ― 役割、処理の方法、肌トラブルの防ぎ方
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アンダーヘアをそのままにするか、整えるか、全部なくすか。男女どちらにとっても、人にはなかなか聞けない話題です。このコラムでは、陰毛の役割と、どれくらいの人が処理しているかを研究の数字で確かめ、処理の方法ごとの手順と肌トラブルの防ぎ方をまとめます。先に結論を書くと、医学的に「処理すべき」「残すべき」という答えはないです。自分に合う形を選ぶための材料として読んでください。
陰毛の役割:分かっていること・確かでないこと
アメリカ産科婦人科学会(ACOG)の医師は、陰毛の役割を「耳や鼻、目のまわりの毛と同じように体を守ること」と説明しています。挙げられているのは次のような働きです。
- 性器まわりの薄い皮膚を、性行為のときなどの摩擦から守る
- 皮膚を温かく、うるおった状態に保つ
- ほこりや汚れ、菌を性器の入り口から遠ざける
毛の根元には神経が集まっていて、毛がわずかに動くだけでも感じ取れることも分かっています(Cleveland Clinic)。一方で、「毛があると病気を防げる」「においで相手を引きつける」といった話は、専門家が「そう考えられている」と述べる段階で、しっかり確かめた研究は見つからなかったです。同じ医師は、においを感じるのは毛が汗や皮脂、菌をとらえているからで、陰毛そのものは不潔ではなく、処理する医学的な理由もないと書いています(ACOG)。
どれくらいの人が処理している? 研究の数字
いちばん大きな調査は、アメリカの18〜65歳の男女を全国から無作為に選んだ、カリフォルニア大学のチームによるものです。
- 女性3,372人の調査では、答えた3,316人のうち83.8%が処理したことがあり、16.2%は一度もなかった(Rowen ら, 2016)
- 男性4,198人の調査では、50.5%が定期的に処理していた(Gaither ら)。こちらは「定期的に」なので、女性の「したことがある」とは数え方が違う
- 同じ調査を「処理したことがある」でそろえると、男性66.5%、女性85.3%だった(Truesdale ら, 2017)
女性の調査で処理の道具を見ると、処理したことがある人のうち、カミソリ(電気でないもの)が61.0%、はさみが17.5%、電気かみそりが12.0%、ワックスが4.6%、除毛クリームが1.2%、レーザーが0.7%でした。全部なくしたことがある人は62.1%、自分で処理する人は92.8%でした(Rowen ら, 2016)。
日本では、国全体を代表するような男女別の調査は見つからなかったです。「VIO脱毛」の調査は多いものの、ほとんどが脱毛クリニックやサロンの行ったもので、数字は宣伝の側面も含むため、ここでは取り上げません。
処理する理由と、「清潔になる」「性感染症が増える」の読み方
女性の調査で、処理したことがある人に理由を聞いた結果(複数回答)です(Rowen ら, 2016)。
- 清潔だと思う:59.0%
- 習慣になっている:45.5%
- 見た目がよくなる:31.5%
- パートナーが好む:21.1%
- オーラルセックスがしやすい:19.6%
どんな時に処理するかでは、性行為の前が55.6%、旅行の前が45.7%、病院にかかる前が40.0%でした。男性では、性行為に備えての処理が25〜34歳で73%といちばん多く、清潔のため(61%)、習慣(44%)が続きました(Gaither ら)。
「清潔になる」と感じる人は多いものの、処理で陰部が衛生的になると示した研究は見つからず、前述の医師は「陰毛は不潔ではない」と述べています(ACOG)。ただ、将来の介護を見すえて処理を考える、いわゆる「介護脱毛」は日本で話題です。介護情報サイトの会員2,784人への調査では、介護する相手が脱毛していた方がいいかに「はい」が46%、「どちらでもよい」が42%、「いいえ」が12%で、「はい」の理由は拭き取りがスムーズ(91%)が最多でした(介護ポストセブン, 2025)。
性感染症との関係にも注意が必要です。全国調査では、処理したことがある人は、年齢と経験人数をそろえても、性感染症にかかったことがあると答えやすい(オッズ比1.8)という結果でした(Osterberg ら, 2017)。ただ、これは同じ時点で聞いた「関係」で、処理が原因とは言えないです。処理する人ほど性行為が活発、といった別の理由でも説明できます。実際に検査で確かめた大学生の女性214人の研究では、頻繁に全部処理する人と、淋菌・クラミジアとの関係は見られなかったです(Luster ら, 2019)。
処理の方法を比べる
- はさみ・トリマーで短くする:肌の近くを切らないので、いちばん安全とされる(ACOG)。整えた感じは出るが、無毛にはならない
- カミソリ:安く、すぐできる。切り傷、かみそり負け、埋没毛が起きやすく、翌日からチクチクする
- 除毛クリーム:薬で毛を溶かす。痛みはないが、デリケートな部分はかぶれやすい(ACOG)
- ワックス:根元から抜くので数週間もつが、痛みとやけどの心配がある(ACOG)
- 医療脱毛(レーザー):毛を大きく減らせるが、費用がかかり、元に戻しにくい。完全に永久とは限らない(ACOG)
処理したことがある全国の男女5,674人のうち、25.6%が処理でけがをしたことがあり(女性27.1%、男性23.7%)、多かったのは切り傷(61.2%)、やけど(23.0%)、発疹(12.2%)でした。医療機関にかかったのは1.4%でした。これまでに11回以上全部なくした人は、男女とも、けがをしやすかったです(Truesdale ら, 2017)。
自分で処理する手順:トリマー・はさみ/カミソリ
まず短くする(トリマー・はさみ)
- 明るい場所で、立って行う。手鏡を使う。寝ころんで処理した時や、パートナーに任せた時に、受診が必要なけがが多かったとされる(AAD)
- 乾いた毛に、長さをそろえる部品(アタッチメント)をつけたトリマーを当てる。はさみなら先の丸いもので、毛先を少しずつ
- しわの多い所(陰のうや、外側のひだのまわり)は、反対の手で皮膚を軽く伸ばしてから
カミソリで剃る場合
- 先にトリマーで数mmまで短くする。長いまま剃ると刃が詰まり、引っかかりやすい
- シャワーのあと、肌が温まって柔らかい時に行う(AAD)
- シェービングクリームかジェルを塗る。石けんの泡でもよい(ACOG)
- 毛の流れに沿って、軽い力で剃る(AAD)。同じ所を何度もなでない(MSDマニュアル)。陰毛は向きがばらばらなので、少しずつ向きを確かめる
- ひとなでごとに刃をすすぐ。清潔な刃を使い、使い捨てなら5〜7回で替える。人と共用しない(AAD)
- 終わったらぬるま湯で流し、タオルで押さえるように水気を取る。香料の入っていない保湿剤を塗る(AAD)
- カミソリは乾いた場所に置く(AAD)
除毛クリーム・ワックス・医療脱毛と光脱毛
- 除毛クリーム:国民生活センターが調べた10商品のうち、デリケートな部分に使えるのは4商品、使えないのは4商品、記載なしが2商品だった。本体の表示で使える場所を確かめ、まず少量で肌に合うか試す(国民生活センター, 2019)。厚生労働省の通知では、傷や湿疹のある所に使わない、強くこすらない、生理の前後は避ける、が注意として挙げられている。放置時間は商品の表示を守る
- ワックス:サロンなら、ヘラを同じ容器に何度もつけ直さない(二度づけしない)店を選ぶ(AAD)。しびれさせる麻酔クリームを先に塗らない。やけどしても気づけなくなるため(ACOG)
- 医療脱毛と光脱毛の違い:毛を作る部分(毛乳頭など)を壊すことは医療行為で、医療機関でしかできない。エステでできるのは、光を当てて一時的に減らすなど、医療行為に当たらない範囲だけ(国民生活センター, 2017)。レーザーは黒い毛の色素に反応するしくみ
全国の消費生活センターには、約5年間で脱毛によるけがの相談が964件寄せられ、エステが680件、医療機関が284件でした。どちらも皮膚のトラブルとやけどが多かったです(国民生活センター, 2017)。受ける前に、リスクと、トラブル時の対応を説明してもらいましょう。
肌トラブルの見分け方と受診の目安
- かみそり負け:剃ったあとの小さな傷に菌が入り、毛穴に赤いぶつぶつや膿ができる(細菌性の毛のう炎)(家庭の医学)
- 埋没毛:剃ったり抜いたりした毛が、皮膚の中で伸びたり曲がって戻ったりして炎症を起こす。脚の付け根に多い。まず処理を休み、温めたタオルを当てる(MSDマニュアル)。針やピンセットで自分でほじらない
- かぶれ:除毛クリームやシェービング剤で、赤み・かゆみ・ひりひりが出る
- やけど:ワックスの熱や、脱毛の光・レーザーで起きる
- 切り傷:処理のけがでいちばん多い
大学生1,110人の調査では、処理する人の80.3%が陰部のかゆみを一度は経験していました(Butler ら, 2015)。膿がたまって大きくなる、赤みや腫れが広がる、熱が出る、数日で治らない時は皮膚科へ。水ぶくれやただれ、いぼのようなものが続く時は、性感染症の可能性もあるので、皮膚科・泌尿器科・婦人科で相談しましょう。
「ある・ない」とセルフプレジャー、パートナーとの関係
処理と性生活の研究は、どれも「関係」を見たもので、処理すると心地よくなる、と確かめたものはないです。女性2,451人の調査では、全部なくす人ほど性機能の点数が高い傾向(絶頂の項目は除く)がありましたが(Herbenick ら, 2010)、全国調査では、年齢などをそろえると性行為の種類と処理との関係は見られなかったです(Rowen ら, 2016)。22の研究をまとめた分析でも、処理する女性としない女性で、満足度に差はなかったです(Eltobgy ら, 2024)。ひとりで楽しむときの感じ方が、毛の有無で変わるかを調べた研究も見つからなかったです。どちらが正解ということはなく、処理するかどうかは自分の心地よさで決めてよいことです。
好みは人によって大きく分かれます。大学生の調査では、相手に毛がないことを好む人が男性で60.0%、女性で24.4%、「どちらでもよい」が男性10.1%、女性19.4%でした(Butler ら, 2015)。自分の好みと相手の好みが違うのはよくあることなので、変える前に話しておきましょう。
経験者のあいだでよく語られること
ここからは研究ではなく、日本語と英語の体験記事で、複数の書き手が共通して書いていたことです。
- 生えかけがいちばんつらい:剃った翌日から毛先が出て、数日はチクチク、かゆみが続いたという声がとても多い。一度の「全部剃り」で懲りた人もいる
- 奥は自分で見えない:前側は剃れても、奥のほうは見えずに難しかった、という話が多い
- 肌の色が目立った:毛がなくなって、隠れていた肌の色の濃さが気になった、という声がある
- 蒸れ・かゆみが減った:夏場や生理中の蒸れが楽になったという声がある一方、においはあまり変わらなかった、と書く人もいる
- ふれあう感じが変わる:肌が直接ふれる感じが好き、という人と、生えかけのチクチクが相手に当たって気になった、という人に分かれる
- 戻せない方法で後悔:レーザーで全部なくしたあと、年齢を重ねて少し残せばよかったと思った、という体験もある
修行のお題 次に処理するときは、カミソリを使わず、トリマーやはさみで長さをそろえるだけにしてみましょう。翌日と3日後に「かゆみ・チクチク・蒸れ・気にならない」のどれに近いかをメモし、全部なくす前に、自分に合う長さを探す材料にします。
ここで紹介した数字の多くはアメリカの調査で、自己申告にもとづきます。処理すれば必ず清潔になる、心地よくなる、といった研究の裏付けはないです。赤み・痛み・膿・水ぶくれが出たら処理をやめ、治らなければ皮膚科で相談しましょう。医療脱毛は元に戻しにくいので、範囲はよく考えて決めてください。
参考にした資料
- ACOG(米国産科婦人科学会): To Shave or Not to Shave: An Ob-Gyn's Guide to Pubic Hair Care
- Cleveland Clinic: Body Hair: Types & Why You Have It(2025更新)
- American Academy of Dermatology: 7 ways to prevent injuries while trimming pubic hair
- American Academy of Dermatology: Hair removal: How to shave
- Rowen TS ら(2016)Pubic Hair Grooming Prevalence and Motivation Among Women in the United States. JAMA Dermatology 152(10)
- Gaither TW ら(2017)Prevalence and Motivation: Pubic Hair Grooming Among Men in the United States. American Journal of Men's Health 11(3)
- Truesdale MD ら(2017)Prevalence of Pubic Hair Grooming–Related Injuries and Identification of High-Risk Individuals in the United States. JAMA Dermatology 153(11)
- Osterberg EC ら(2017)Correlation between pubic hair grooming and STIs: results from a nationally representative probability sample. Sexually Transmitted Infections 93(3)
- Luster J ら(2019)Association between pubic hair grooming and prevalent sexually transmitted infection among female university students. PLOS ONE 14(9)
- Herbenick D ら(2010)Pubic Hair Removal among Women in the United States: Prevalence, Methods, and Characteristics. Journal of Sexual Medicine 7(10)
- Butler SM ら(2015)Pubic Hair Preferences, Reasons for Removal, and Associated Genital Symptoms: Comparisons Between Men and Women. Journal of Sexual Medicine 12(1)
- Eltobgy A ら(2024)Effects of pubic hair grooming on women's sexual health: a systematic review and meta-analysis. BMC Women's Health 24
- 国民生活センター(2017)なくならない脱毛施術による危害
- 国民生活センター(2019)除毛剤の使用による顔などの皮膚障害に注意!
- 厚生労働省(2019)除毛剤の使用上の注意等について(通知)
- MSDマニュアル家庭版:ひげの内方発育(須毛部仮性毛包炎)
- 家庭の医学 大全科:尋常性毛瘡(かみそり負け)
- 介護マーケティング研究所 by 介護ポストセブン(2025)【2,784人調査】介護脱毛は必要?