第4章 うまくいかない時
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修行の道には、足ぶみする日もある。それは当たり前のことなんだ。ここでは、よくある悩みをひとつずつほどいていこう。
届かない
まず知っておいてほしいのは、あなただけではないということ。アメリカで、かたよりなく選ばれた(無作為に選ばれた)女性1,749人の調査がある。そのうち24%が、オーガズムについての困りごとを答えていた。これは、女性の性の悩みの中で2番目に多いものだとされている(Meston ら, 2004a)。クリーブランド・クリニックの解説では、これまで一度もオーガズムを経験したことがない女性は、最大で15%ほどいるとされているよ。
届きにくさには、いろいろなことが関わる。疲れやストレス、不安、ホルモンの変化、持病、飲んでいる薬などだ。たとえば、うつや不安のために使われる薬の一種(SSRI)は、性の反応に影響することがあると説明されている(クリーブランド・クリニック)。気になるときも自分の判断で薬をやめず、処方した医師に相談しよう。
専門家による支援の場では、体の知識を学び、ひとりで自分の反応を確かめていく練習が使われてきた。これは「誘導マスターベーション」と呼ばれる。考え方や行動のくせを見直す治療(認知行動療法)の一部として使われてきたものだ(Meston ら, 2004a)。このサイトで続けている「観察して、1つずつ変える」練習も、その考え方と重なるところがあるんだ。
行き詰まったら、次のことを試してみよう。
- 目標を「届くこと」から「心地よさを1つ見つけること」に変える
- 数日あいだをあけて、体と気持ちを休ませる
- 場所、時間帯、姿勢、潤滑剤の有無など、条件を1つだけ変える
- 道具の弱い振動を試してみる(第5章)
痛い、ひりひりする
痛みは「ちょっと待って」という体からのサインなんだ。まず手を止めよう。そして、すべりをよくする液(潤滑剤)を足す、圧を弱める、といったことを試そう。先端をおおう皮膚のフード(包皮)の上から触れるなど、直接ではない触れ方に変えるのもいい。それでも痛む、何日も痛みが残る、同じ場所がいつも痛む、というときは、がまんを重ねずに第6章を読んでほしい。
濡れにくい
潤いは興奮とともに増えていく。けれど、気持ちが高まっていても、体の潤いが追いつかないことはある。月経が終わること(閉経)などで、女性ホルモンのひとつ(エストロゲン)が減ると、腟の組織が薄く乾きやすくなることも知られている(MSDマニュアル家庭版)。濡れにくいことは「感じていない証拠」ではないから、遠慮なく潤滑剤に頼っていいんだよ。
集中できない
明日の予定や体型のこと、「今日もだめかも」という考えが浮かぶと、感覚が遠のいてしまう。そんなときは、よけいな考えを追い払おうとしなくていい。「今、指先がどこに触れているか」「温かいか、ひんやりしているか」に、注意をそっと戻す練習が役立つかもしれない。これはマインドフルネスと呼ばれる方法だ。性的な欲求や興奮に悩む女性26人のグループ講習では、性的な欲求や悩みの点数がよくなった(Brotto ら, 2008)。
ただしこれは少人数の研究なんだ。比べるためのグループ(対照グループ)もない、お試しの段階の研究(予備的な研究)だよ。「役立つ人がいるかもしれない」くらいに受け止めてね。
罪悪感がある
「はしたないのでは」「いけないことでは」という気持ちは、育った環境や文化から来ていることが多い。研究でも、年齢や教育、宗教、人間関係など、心と暮らしにまつわる要因(心理社会的な要因)が、女性のオーガズムと関わるものとして取り上げられている(Meston ら, 2004b)。性教育サイト「命育」は、ユネスコなどの国際的な指針をもとに、こう伝えている。性的な気持ちや欲求は自然なもので、恥ずかしいものではない、と。自分の体を知って大切にすることは、誰かを傷つける行いではないんだ。
届かなかった日の自分を責めるのは、もうおしまいにしよう。うまくいかない日も含めて、ぜんぶがあなたの道の一部なんだ。
修行のお題 終わったあとに3行だけメモしよう。「気が散ったこと」「心地よかったこと」「次に1つだけ変えてみたいこと」。3回分たまったら読み返して、共通点を探してみてね。
参考にした資料
- Meston CM, Hull E, Levin RJ, Sipski M (2004a). Disorders of orgasm in women. Journal of Sexual Medicine
- Meston CM, Levin RJ, Sipski ML, Hull EM, Heiman JR (2004b). Women's orgasm. Annual Review of Sex Research
- Brotto LA, Basson R, Luria M (2008). A mindfulness-based group psychoeducational intervention targeting sexual arousal disorder in women. Journal of Sexual Medicine
- Anorgasmia: Causes, Symptoms, Diagnosis & Treatment(Cleveland Clinic)
- 女性の性機能および性機能障害の概要(MSDマニュアル家庭版)
- 女性のセルフプレジャーは「恥ずかしい」こと?いいえ、女性にとっても自然なこと!(命育)