第4章 やめたい癖と直し方 ― 強すぎる握り・床オナ・足ピン
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長く続けてきたやり方には、知らないうちに癖がついているものなんです。癖があるのは、あなたがだめだからではありませんよ。気づけたなら、そこからが本当の修行の始まり。少しずつ、からだに新しい道を覚えてもらいましょう。
「ひとりなら届くのに、ふたりだと届かない」という悩み
自慰では射精できるのに、パートナーとの性交では、腟の中で射精できない。この状態を「腟内射精障害」といいます。泌尿器科の解説では、原因の半分以上が、若いころから続けてきた、からだに合わないマスターベーションの習慣だとされています。TENGAヘルスケアは、国内でこの状態の疑いがある人を約270万人と見積もっています。そして、原因の約7割が合わないやり方によるものだと発表しています(メーカーの発表による数字です)。子どもがなかなかできない悩み(不妊)の相談の中で見つかることも多い悩みです。
海外でも、同じことが指摘されています。射精が遅い・できない男性の多くは、独特の自慰のやり方をしていると報告されています。パートナーの手や口、腟では再現しにくいやり方です(Perelman, 2016)。原因はほかにもあります。心の問題、糖尿病などの病気、気分の落ちこみを治す薬(抗うつ薬)の一部の影響などです。原因をひとつに決めつけられない点には、注意が必要です(Abdel-Hamid ら, 2018)。
見直したい主な癖
- 強すぎる握り(強グリップ):強い力や速さでないと届かなくなる。腟の中のようなやわらかい刺激では、足りなく感じやすくなる
- 床オナ(床や布団に押しつけてこする方法):手とも性交とも違う、押しつけの感じに慣れてしまう
- 足ピン(足をまっすぐ突っ張った姿勢):その姿勢でないと届かなくなる。パートナーとの場面では姿勢を自由に選べないので、困りやすい
- 先をおおう皮(包皮)の上からだけこする方法:その感触に慣れると、ほかの刺激で届きにくくなることがある
床オナは、腟内射精障害だけでなく、勃起の悩みにもつながることがある、と説明する医療機関もあります。ただ、勃起との関係を示す根拠は、腟内射精障害との関係ほど十分ではありません。情報源によって、書き方に差があります。
段階的に直す:強い刺激から、少しずつやさしい刺激へ
直し方の基本は、いきなり全部を変えないことです。刺激の強さを、一段ずつ下げていきます。国内の泌尿器科では、「射精の練習(射精リハビリテーション)」が行われています。固さの違うマスターベーション補助具を使い、強い刺激から弱い刺激へ、段階的に慣らしていく方法です。腟内射精障害の16人がこの方法に取り組んだ報告があります。12人(75%)が補助具の中で射精できるようになり、5人(31%)がパートナーとの間で射精できるようになりました(Kobori ら, 2012)。一方で、半数以上は、パートナーとの射精までは届いていません。比べるグループのない、少人数の報告であることも、正直にお伝えしておきますね。
ひとりで取り組むときの目安は、次のとおりです。
- 姿勢を変える:まず、あおむけや座った姿勢で、手を使う方法に切り替える。床オナをしていた人は、うつぶせをやめるところから始める
- 足の力をゆるめる:ひざを軽く曲げ、足を開いた楽な姿勢で。突っ張りそうになったら、息を吐いて力をゆるめ直す
- 握りを弱める:ローションをたっぷり使い、握る力を「今より一段弱く」する。届かなくても、その日はそれでよしとする
- 刺激の種類を変える:利き手でない手を使う、動かし方を変えるなど、いつもの型を崩す。専門家も「手を替える」ことをすすめています(Perelman, 2016)
- 補助具を使う:やわらかめの道具で届くことを目標に、固いものから順に移る(第5章)
変わるまでには、何週間から何か月かかかるのがふつうです。1回ごとの結果より、「前より一段やさしい刺激で近くまで行けた」という変化を見てあげてください。
回数を減らしたほうがよい?
この点は、情報源によって考え方が分かれます。射精の遅さに悩む人の治療では、しばらく自慰を休む・減らすことが、よくすすめられています(Perelman, 2016)。一方で、一般向けの健康情報では「回数に正しい数はない」と説明されることが多いです。困りごとがない人は、回数を気にしすぎなくて大丈夫です。パートナーとの間で届きにくいと感じている人は、回数を少し減らして、一回一回をていねいにする。そう考えるとよいでしょう。
パートナーとの間で届かない状態が続く、子どもを望んでいるのに射精できない。そんなときは、ひとりで抱えこまず、泌尿器科に相談してください。男性不妊やメンズヘルスを扱うところがおすすめです。カウンセリングや、医師の指導のもとでのリハビリテーションを受けられる施設があります(第6章)。
長年の癖は、長年かけてできたもの。すぐに消えなくて当たり前なんですよ。昨日のあなたより、ほんの少しやさしい刺激で届けたなら、それはもう立派な一歩です。
修行のお題 この1週間、自分の癖を1つだけ選んで(握る力、姿勢、足の突っ張りなど)、それだけを変えてみましょう。毎回、その癖が「出た・少し出た・出なかった」を3択で記録し、1週間後に並べて眺めてみてくださいね。
参考にした資料
- Kobori Y ら(2012)膣内射精障害患者に対するマスターベーションエイドを用いた射精リハビリテーション.日本泌尿器科学会雑誌
- Perelman MA(2016)Psychosexual therapy for delayed ejaculation based on the Sexual Tipping Point model. Translational Andrology and Urology
- Abdel-Hamid IA, Ali OI(2018)Delayed Ejaculation: Pathophysiology, Diagnosis, and Treatment. World Journal of Men's Health
- 腟内射精障害について(プライベートケアクリニック東京)
- 床オナは危険!…膣内射精障害の恐れと改善方法を徹底解説(Dクリニックメンズヘルス)
- 男性機能のトレーニングツール発売のお知らせ(TENGAヘルスケア プレスリリース、2017年)